編集者 山村光春さんの本
「おうちで作れるカフェのお菓子」
山村光春(編集者 BOOKLUCK 主宰)
![](https://muffinwoyaku.com/apps/note/wp-content/uploads/2023/07/cafeffeeco19のコピー.jpg)
偶然とかいて”ひつぜん”と読む、
そんな出会いは人生にときどきありますが、
ヒコさんとの出会いもそのひとつかもしれません。
僕はスイーツのおいしいカフェを探し求めて、
全国をめぐっていました。
それらのメニューのレシピを紹介する本を
編集していたので、そのリサーチもありますが、
そんななか「カフェヒコというお店の
マフィンがおいしいらしい」
といううわさをどこからか聞きつけ、
お正月休みを利用して三重まで行きました。
もちろんヒコさん自身のことは知らず、
「coffee」を逆さにした店名に、
どことなくセンスを感じていました。
たどり着くと、民家を改装したクリーンな空間で、
当時からいわゆる「古民家カフェ」
は多くありましたが、
ここまでしっかり手を入れてるところは珍しく、
逆に新鮮でした。
その瞬間です。
入り口の真向かいにある本棚に、
僕の著書「眺めのいいカフェ」が、
とてもよいところに飾られていたのです。
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僕はうれしくなって、思わずお店の人に向かって
「これ、僕が書いた本なんです」
と、指を差しました。
その本をヒコさんは、なぜか隣にある
モーリス・センダックの絵本
「かいじゅうたちのいるところ」と勘違いし
「そうなんですね!うちの妻が喜びます」と言って、
呼んできてくれたんです。
今から考えると、
どう見てもモーリスって顔じゃない僕のことを、
なぜヒコさんは信じたのか分かりません。
それ以来、このエピソードはヒコさんとの、
永遠の語りぐさになっています。
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さて、それから僕がどうしてこの店を
取材しようと決めたのか。
もちろんマフィンの見るからにおいしそうな
傘の張り出しぐあいとか、そのわりに
口当たりは軽やかで口溶けがいいところとか、
フィリングの組み合わせの妙とか、
理由はいくつもありますが、決め手となったのは、
その所作でした。
カウンターの中でアイスコーヒーを入れている
ようすをチラリと見た時、ヒコさんは
表面の気泡をていねいにつぶしていたのです。
つまり、僕の思う「よいカフェ」とは
こういうちょっとしたところに、
ちゃんと心を注げるかどうか。
「ここは間違いない」と思った瞬間でした。
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そうして取材した記事は、2018年
「おうちで作れる カフェの朝食」
という本になりました。
さらに2022年、シリーズの改訂版
「おうちで作れる カフェのお菓子」にも再掲載し
「喫茶日曜日」の紹介記事も加えています。
僕が思うに、レシピは写真や文章では
伝わりきれない「その店らしさ」の結晶です。
また本になるということは
「ここに、こんなマフィンがおいしいお店があった」
という証として、
遠い未来まで残ることを意味しています。
ずっと継がれていく味。
「カフェヒコ」のマフィンは、
それに見合うものだと思います。
だって、まじでおいしいですもん。
![](https://muffinwoyaku.com/apps/note/wp-content/uploads/2023/07/本2-09.jpg)
Amazon.co.jp: おうちで作れる カフェのお菓子 : 山村 光春: 本
![](https://muffinwoyaku.com/apps/note/wp-content/uploads/2023/07/本2-10.jpg)
やまむらみつはる
雑誌「オリーブ」のライターを経て、
暮らしまわりの編集とライティング
を手がけるBOOK LUCK設立。
編著書に「眺めのいいカフェ」
「カフェの話」(ともにアスペクト)
「おうちで作れるカフェのお菓子」
(世界文化社)など多数。
京都芸術大学講師。「やさしい編集室」主宰。
現在、福岡と東京の二拠点暮らし。